武田薬品は、2014年3月期(日本基準)は連結営業利益が前の期から3割増え、1600億円程度となったようだ。
糖尿病治療薬「アクトス」に関連するガン発症リスクを隠していたとして米国の男性が同社を相手に起こした訴訟で、ルイジアナ州西部連邦地裁の陪審は60億ドル(6200億円)の賠償を命じる判決を出したが、引当金など訴訟に関する費用は計上しない予定だ。
http://www.nikkei.com/markets/company/news/news.aspx?scode=4502&type=2&bu=B8B6E5B793BAB1E0E2E3E6E2E6E3E69C968199969096
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(1)訴訟について

訴訟の判決があった8日の東京株式市場では武田の株価が大幅に下落し、一時、前日比8%安の4444円を付け、年初来安値を更新しました。米国での訴訟による収益への影響に懸念が広がりました。
どうも、(米国と日本の裁判の違いが伝わらずに)この判決が確定したと思われたようです。

この判決については、今後、判事が支払義務を判定します。(米国は、陪審制度を採っており、一般市民が判決を下します。判事は、日本でいえば、裁判官にあたります。)
別の州の州裁判所で陪審が昨年、損害賠償の支払い義務があると認定しましたが、判事が無効にしています。
つまり、この8日の判決も、判事が無効とする場合も考えられます。



(2)武田薬品は、2014年3月期からIFRSを適用

6200億円の支払と聞いた時に、「引当金」積むのだろうかと思いました。
引当金を積めば、税前利益が6200億円も減って、負債が6200億円増えてしまいます。


控訴をすれば、最終判決が出る迄には数年はかかるであろうし、判決が覆る事も良くあるので、今、引当金を積まずに、もう少し状況を見守ってもいいのではないかと悩むところであります。

ところで、武田薬品は、2014年3月期からIFRSを適用します。
そこで、日本基準とIFRSでは、訴訟損失引当金の計上のタイミングが違うのか書いていきます。


(3)考え方

日本会計士協会の「我が国の引当金に関する研究資料(平成25年6月24日)」の中では、「訴訟損失引当金」について具体的に日本基準とIFRSについて書いています。

(P13~14から引用)

(日本基準)
監査報告書の提出日までに敗訴又は支払を伴う和解が確定しない場合であっても、裁判のいずれかの段階で敗訴した場合には、一般的には訴訟損失の発生可能性が高まっているといえると考えられるため、通常、期末日において引当金を認識する事になると思われる。

(IFRS)
専門家の意見も含む全ての利用可能な証拠を考慮した上で、報告期間の末日において「現在の債務が存在している」か否かを決定する。
(a) 報告期間の末日において現在の債務が存在している可能性の方が存在していない可能性よりも高い場合には、引当金を認識する
(b) 報告期間の末日において現在の債務が存在していない可能性の方が存在している可能性よりも高い場合には、経済的便益をもつ資源の流出の可能性がほとんどない場合を除き、偶発債務を開示する(IAS37.16)
⇒ IFRSの引当金は、「現在の債務が存在」している事が要件の一つにあります。さらに、「経済的便益を持つ資源の流出が必要となる可能性が高い」ことです。具体的には、50%超の確立で起こるのであれば、可能性が高いことになり、引当計上します。



大手監査法人の資料でも、IFRSを適用した場合の、訴訟損失引当金の計上のタイミングについて解釈が書いてあります。
(2012年7月)
http://www.kpmg.com/jp/ja/knowledge/article/Documents/ifrs-adoption-issues-06-2012-07-23.pdf

(P4から引用)
(現在の債務の考え方)第一審で敗訴した場合は、多くのケースにおいて、引当金の計上が不要とすることを支持する証拠が不足しているものと考えられます。そのような場合には、控訴審の判決を待つのではなく、第一審の判決に基づき、当該判決が下された時点で(かつ、他の認識要件を満たすならば)引当金を認識する必要があると考えられます。



(4) 実務

IFRS早期適用している会社の「有価証券報告書」を見たところ、訴訟損失引当金計上のタイミングについて記載がありました。

訴訟引当金は、当社グループが特定の訴状を受領し、その解決のために経済的資源の流出を回避できない可能性が高いと見込まれる場合に、設定されます。訴訟引当金は、主として、翌連結会計年度に使用されるものと想定しています。(2012年度 日本板硝子)


日本基準の会社では、以下のように記載がありました。
訴訟に対する損失に備えるため、将来発生する可能性のある損失を見積もり、必要と認められる額を計上している。(2013年度 シャープ)


日本基準の会社をざっと見たところ、損失の発生の可能性を判断して、第1審で計上している会社もあれば、高裁の判決を受けてから計上している会社もあります。




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